平岡 仁 Jin HIRAOKA

平岡 仁 Jin HIRAOKA

By IIDAKENTARO

平岡 仁について
平岡 仁さんは、茨城県笠間を拠点に活動する焼き物の作り手です。
自身を「陶芸家」ではなく「焼物屋」と呼び、器を使われることを前提とした生活の道具として捉えています。

「おいしいものを食べないと、作れない器もあるんですよ」
そう言って、豪快に笑う平岡さんの趣味は旅行です。旅先では、その土地の料理を味わい、酒を飲み、満足するまで食べる。自身の器を使うお店を訪ねることも多く、器と料理を通して味わう時間そのものが、器づくりの源になっているようです。

器は日々の食卓で使われ生活の道具。
だからこそ平岡さんは、「器で大事なのは手の収まりと口当たりだと思います」と語ります。

その言葉どおり、平岡さんの器には使う人の暮らしの中に入り込み、料理と酒を楽しむおおらかな風情が漂います。

 

 

陶芸家ではなく、焼物屋
岡山・備前での修行時代、平岡さんは薪窯による焼成と、土そのものが持つ力強さに向き合ってきました。「釉薬を使わない備前焼は筋肉を鍛えた肉体美のような魅力があり、釉薬にはお化粧したような色気や繊細さがある」と話し、現在は、粉引や灰釉など釉薬を用いた表現にも取り組みます。

代表的な作品のひとつが、五角形のぐい呑です。
ろくろで円を引いたあと、かたちを見極めながら角を取り、ひとつひとつ面を取っていく。その工程では指先の感覚と経験が頼りで、甘く残せば野暮ったく、面を立てすぎれば硬さが出てしまうため、迷いなく動かすその姿に緊張感が漂います。

ろくろ目を残した表情や、石混じりの土が生む質感、焼成によって現れる揺らぎ。そこには、作家の意図と、窯の中で起こる偶然性が、緊張感を保ちながら共存しています。

 

 

多様な作家を輩出する笠間
平岡さんが工房を構える笠間は、江戸時代中期から続く焼き物の産地として知られています。笠間藩の庇護のもとで発展し、日用品としての器がこの土地の暮らしを支えてきました。華美な装飾よりも実用を重んじる器づくりの精神は、今も笠間の風土に息づいています。

工房には古道具や建具が静かに置かれ、長い時間を経て残ってきたものへの敬意が感じられます。「なぜ、これは残ったのか」という問いは、流行に左右されない器を目指す平岡さんの姿勢と重なり、時間とともに価値を深めていく道具への眼差しとして作品にも反映されています。

 

 

酒食を愛する人生
「器は、使ってもらって初めて意味を持つものだと思っています。料理がのって、酒が注がれて、暮らしのなかに入っていく。シンプルですが、私はそんな時間が幸せなのだと思っています。気に入ったお皿に好きな肴を盛って、気に入ったぐい飲みで酒を飲む時間は最高ですよ(笑)」

日々の食卓に寄り添い、何気ない時間を豊かにする存在。平岡 仁さんの器には、酒食を愛する作家の美意識が詰まっているようです。