亀井紀彦 Kamei Norihiko

亀井紀彦 Kamei Norihiko

By IIDAKENTARO

亀井紀彦について
日本の美意識と壮大な自然観が融合した亀井 紀彦さんの作品。小さな世界に大自然を切り取ったような神秘的な美しいアートはどのように生まれるのでしょうか。

学生時代から、華道や茶道を嗜んでいたという亀井さんは、卒業制作で老舗和菓子屋の「とらや」にオリジナルの和菓子を依頼。「食べて無くなる事の儚さを美しい和菓子で表現した作品」をつくったといいます。「その頃から自然への憧憬や、とどまることなく移ろう“無常”への興味があった」と、儚さと美しさというテーマを求めて生花や自然素材を使った作品を手掛けるようになりました。

 

 

プリザーブドフラワーについて
代表作である「「花山 Hanayama」に使われるひときわ鮮やかなプリザーブドフラワー。「鳥の視点になって、ここではないどこか、ありそうで存在しない景色を作りたい」と、漆黒の盆に一枝ずつ花を植えていきます。「自然の野山に咲く草花も、市場に出てくる生産者による生花も、特殊な加工を施されたプリザーブドフラワーも、どんな花もただ美しく、そして儚い存在」と、亀井さんは話します。

手の平に収まる「浮き石」に景色を描いたのが「景色風 wind of the scenery」。土台の浮き石は桜島で採取されたもので、プリザーブドフラワーとのコントラストが魅力的です。目の前の作品からほのかに漂ってくるのは、オリジナルの香り。「私の作品は、この世にありそうで存在しない世界です。その世界ではどんな香りがするのか。オリジナルの香りによって、この世界観に奥行きが出たと思います」とはなすように、人間の作為と自然の無作為が同居した不思議な作品です。

 

 

北鎌倉について
「もともと東京で暮らしていたのですが、逗子に住んでいる友人宅を訪れたのをきっかけに、引越しを考えるようになりました。北鎌倉は自然が近く、静かで落ち着いた雰囲気が気に入っています。近くの山林を歩いているときに、けなげに咲く山野草の姿を見て作品にしたいと思いました」と話す通り、市場に出回ることのない名も無き花の儚さと美しさを見事に表現したのが山野草を盆栽のように生けた「時山 Tokiyama」です。

 

 

亀井紀彦より
「自然の野山に咲く草花も、市場に出てくる生産者による生花も、特殊な加工を施されたプリザーブドフラワーも、どんな花もただ美しく、そして儚い存在です。その美しさをアート的なアプローチでプロダクトにし、生活に取り入れる。そこには余計な理由は必要ないのではないかと思っています」

私たちは古くから盆栽や坪庭など、暮らしのなかに自然を取り込む工夫を凝らしてきました。亀井さんの作品はインテリアとしてひと味違った自然の神秘を感じさせてくれます。