Saburo
Saburoについて
サブロウさんは、20代の頃に3年間ほどドイツで生活していました。帰国後、作家として生きていこうと決心したサブロウさんは、ガラスでの表現に可能性を求めて「富山ガラス造形研究所」で一から学びます。
「私は琵琶湖の近くが出身地なのですが、なにか特別なこだわりでドイツへ行ったというわけではなく、たまたま近所のおばさんが“イギリスかドイツに伝手がある”と誘ってくれたのがきっかけでした(笑)。最初はドイツで最も暖かい街として知られるハイデルベルグに暮らしていました。その後、ワイン造りの町として有名なリューデスハイム・アム・ラインに引っ越し、ローレライへ向かう船の中でワインを販売していました。その頃、せっかくだしドイツを観光しようとなり、ベルリンで訪れたのが『カイザー・ヴィルヘルム記念教会』です。そこで真っ青なステンドグラスの美しさに魅了され、帰国後ガラス作家として勉強を始めたのです」
滋賀県高島市について
Saburoさんは、日本一の面積と貯水量を誇る滋賀県の琵琶湖のほとりに工房兼ガラス教室を構えています。琵琶湖は、およそ400年以上昔にできあがった古代湖のひとつで、豊富な水量は「近畿の水瓶」とも呼ばれ、京都を通って大阪まで大切な水資源として活用されてきました。安曇川と日本文化遺産に選ばれた「白鬚神社」のある高島市は、琵琶湖に注ぐ水の約3分の1を生み出しています。京の都から遠い浜名湖(はまなこ)を遠江(とおとうみ)と呼ぶのに対して、琵琶湖を「近淡海(ちかつあふみ)」と呼び、昔の人は「近江(あふみ)」と呼んで親しんできました。比叡山や比良山の麓を通る西近江路や「鯖街道」として知られる若狭街道を主なルートとして、港町や宿場町として多くの人や物が行き交った歴史を持ちます。文学のモチーフや浮世絵の題材として全国に知れ渡った「近江八景」など、風光明媚な土地柄として豊かな文化を育んできた日本有数の景勝地です。
キルンワークとホットワークについて
サブロウさんがメインとしている技法は「キルンワーク」と呼ばれる技術。電気窯を使ってガラスを焼くというもので、まず模様や柄をデザインした平面のガラス板を成形し、今度はお皿や器などの型に合わせて再度焼成します。手間のかかる技法ですが、絵画のような面としての緻密な表現と、立体としての再現性や造形美が両立できるのがメリット。
そして、最近新たに挑戦しているのがホットワーク(吹きガラス)による背の高い作品たち。重力で自然に浮かび上がる形を回転させながら整える技術で、型による成形だけでなく、花瓶やグラスなどが自由に作れるようになりました。表現の幅が広がりましたが、「まるでスポーツのような作業で、日々練習と鍛錬が必要。年を取ってからの挑戦はしんどい(笑)」と、新たな創作意欲に燃えています。
Saburoより
私がガラスの創作活動を初めて当初は、白と黒の器しか制作していませんでした。しかし、ガラスの先輩から「様々な色を知ってから作ると、白黒の作品も変わってくるんやで!!」と言われ、色探しの旅に出ることになりました。そもそもガラスという芸術は1960年代に誕生した「スタジオグラス」運動がはじまりです。そのため技法や素材などまだまだ未熟なぶん、可能性も眠っていると思っています。さらに、ガラスは温度によって硬さが変化します。その中で色々な技法が存在し、様々な表情が生まれました。「透明・不透明」「冷たい・暖かい」「硬い・優しい」といった具合に、こんなに表情豊かな素材は他にありません。千差万別なガラスに魅力を感じています。いまだ、白黒に戻ってない私の作品たちは、まだ旅の途中なのだと思います。これからも料理との相性を大切にしながら、技法にこだわって制作していくので、飾るのではなく、もりもり使ってもらいたいと思っています。そして、少しでも「食事の時間」が楽しくなったら嬉しいです。/saburo